宮武淳夫建築+α設計

<庇と環境>
敷地はもともとクライアントが生まれ育った場所であり、40年前に宅地造成された丘陵地に位置する。土地を分筆し、残った細長い南向きの土地に新たに2世帯住宅を建て替える計画である。親世帯は母1人、長男世帯は夫婦+子供2人。要望は2世帯それぞれの生活の独立性を保ちつつ、リビングルームを共有でき、一体性もつくりだせること、南側の庭に位置する既存の生垣と樹木を残すこと。
1階に親世帯と長男世帯のLDKを大きな可動間仕切り戸で区切り、2階には長男世帯のプライベートルームが南に面して配列する間取りを、細長い敷地形状と方位から決定した。
1階では樹木を避けるようにカーブを描いた「庇(ひさし)」が大きく持ち出すことで、樹木と生垣を外壁に見立て、囲われた屋内的な「庭」が生まれる。「庭」とLDKを一体的に扱い、生垣と「庇」に縁取られた細長い隙間が第2の窓のような位置づけである。屋内的な「庭」は、ペアガラス10枚引戸と生垣のダブルスキンに囲われた内と外の干渉空間として、外気による屋内への影響を調整し、深い「庇」と落葉樹は、夏の日差しを遮り、冬の日射熱を室内に取り込むパッシブソーラー効果も担っている。
2階は窓部分で深くなるように、1階と逆対称カーブを描く「庇」を設け、窓は下端を低くし大きくとることで、樹木の上部越しに開放的な町並みの景色を獲得できるインテリアとした。また「庇」の効果により、夏にはほとんど日射を受けない2階の外壁面は、低角度の太陽光が差す冬場に熱吸収が大きくなる黒色とし、屋根は夏場に熱吸収が少なくなるように、北勾配かつ反射率の大きいシルバー色としている。外壁や屋根の通気層と断熱材によるに性能デザインに加えて、外観の色彩と形状からも環境デザインへアプローチしている。
樹木や生垣や町並みや気候といったクライアント家族が慣れ親しんだ既存の環境要素を建築的にとらえて有効利用する、土地活用のリノベーションのような手法による生活空間の創出を意図した。

2対の庇の家(2008)

外観
                                                           

用途:住宅
所在:神戸市垂水区(第一種低層)
業務:設計・監理
期間:設計2007.6-2008.01、監理2008.5-9
延床/建築面積:150/92平米(45/28坪)
構造・階数:木造2階建て
敷地面積:245平米(74坪)
設計協力:nakayama、tonakai、kiyosadasensei
建築施工:ナカノ工務店
電気工事:越牟田電気