宮武淳夫建築+α設計

<擁壁・変形・分断>
京都市北区の2世帯住宅。かなり特殊な敷地だった。南側を道路に面して東西に細長く、北側には複雑な形の既存の擁壁が立ち上がり、擁壁の北東部分ではその上部に三角形状の平地が2階の床高さくらいに位置する変形地。また、敷地は2つの異なる景観条例区域に股がり、西側は「風致第 2 種地区」東側は「山麓型美観地区」に分断されていた。
<2つの景観条例>
厳密な境界ラインを役所に問い合わせたところ、1/2500の地図で設定しているため敷地中央部分に境界があるのは確かなのだが...との答え。両者のルールは異なり「風致」側はより厳しく、1階外壁の道路境界からの後退と2階外壁の更なる後退が求められるが「山麓」にはそれはない。外壁や屋根に使用可能な仕上げ材料や色彩も異なる制限が課せられており、庇の出の必要最低寸法も微妙に異なるルールだった。敷地の奥行きは狭く、コストの関係上選べる材料も制限されるため、曖昧な境界での極端な分節が外観に現れてこないような、しかし条件の痕跡を反映できるような外観形状と仕上げ材料の選定を思い描いた。結果、南側の外壁が2 カ所で折れ曲がりながらも連続し 外側はアプローチの凹み空間として、室内側はリビングに変化をもたらすことへと空間的に反映された。外壁材は金属サイディングから薄いグレーのリシンの吹付けへと徐々に変化させるこで「山麓」から「風致」へと将来的に変わりゆくであろう町並みにグラデーションを与えている。
<擁壁と生活>
元々クライアントが住んでいた土地に新たに新築する計画だった。車椅子生活が必要な親世帯を 1 階に、新婚夫妻世帯を2階に計画した。1階は車椅子生活でも「外」を感じられるように敷地の北側に面する擁壁に向けて外部テラスを作り、擁壁で囲われたプライバシーの高いテラス空間を寝室・LDK のインテリア空間と一体的に計画している。2階の床の高さは北東擁壁上部の三角平地の高さに設定し、そこを庭としてLDK から庭に面してFRPグレーチングのテラスを設け、2 階でありながら外とフラットに床が繋がるLDK空間を実現している。また上下の建物の平面形状は複雑な擁壁の形状に合わせて変形しているため、グレーチングのテラスを介して音だけでなく視線も抜け、親世帯と子世帯の生活の気配が相互に感じられる計画となっている。
<開口>
通りや隣家からの視線が気になる南側の開口はあえてほどほどに抑え、逆に北側擁壁に向けて大きく取った。そのため北側の屋根の軒の高さはできるだけ低くして庭や擁壁に南の光を導き、その間接光が北側から室内へ導かれるように配慮した。北側テラスに設けたFRPグレーチングは光を1階に落とす効果もある。また北側の外壁は擁壁形状に会わせて必然的に凹凸のある複雑な平面形状となっているが、擁壁と建物の間を抜けるすきま風を室内にうまく取り込む効果もあり、南北に抜ける風を期待するだけでなく、地形的要因による通風計画も考慮している。LDKから離して西側に設けた2階の夫婦寝室には、南と北に横に長いスリット窓をそれぞれ上下に設けて、寝転んだ状態で南の空と北側の擁壁がそれぞれの窓から見えるが、窓からのプライバシーは確保された状態になっている。

擁壁のある家(2010)

外観
                                                                                     

用途:住宅
所在:京都市北区(第一種低層・風致第2種&山麓型建造物修景地区、宅造規制区域)
業務:設計監理
期間:設計2010.10-2011.9、現場監修2011.11-2012.5
延床/建築面積:133/76平米(40/23坪)
構造・階数:木造2階建て
敷地面積:186平米(56坪)
設計:宮武淳夫建築+α設計(担当:宮武・中井)
構造設計:3S Associates Inc(担当:橋本・上島・高橋)
建築施工:原田工務店株式会社(担当:原田・角田)
プロデュース:エスリンク